2012年6月23日土曜日


1X11A066 佐藤 鴻 A++


















馬場駅前広場を跨ぐブリッジスロープとして考えられたようだ。屈曲する粗い肌の薄い壁に、引きのばされた牛舌のような、ネクタイのようなフォルムが見慣れないフォルムを現前させている。ダリの“時計”のような
surな時空を展開することで、この煩雑で、喧騒に溢れた場を、いっとき空虚で、真空にする力を持つ都市装置になるだろう。(入江)

1X11A059 小林 大純  A++
















 土木的スケール感をもつチューブの連鎖としての外観をもつ装置は、駅を行き交う人々の無方向な視線の出口を提供しているように感じられる。
外観の大胆な構成と対極をなすような、繊細なインテリアに対する意識が若干欠落している点が残念である。(博多)

1X11A007 新井 翔多 A++


















 台座に虫ピンが水平の展開から円弧を描きながら収斂する。パチンコ玉の鋼球がピンにはじかれるように、通過者が通り抜けたり、絡まったりするという比喩から発想したようだ。映画「去年マリエンバードで」の中で、マストロヤンニが列柱を通行するとき、その歩行速度と連続して列柱が足音を残してこちらに進んでくる相手らを消去するシーンがある。多柱の場は、人々の出会いを複雑で豊かにするかもしれない。(入江)

1X11A128 秦 大智  A++
















Courtyard
 高田馬場のロータリーに緑の丘を作る計画。確かに駅前の学生の猥雑さも、あれが緑の丘になれば清々しい若者の交流にみえるのかもしれない。
 細かな操作は一切排除して幾何学的な丘を切り出した所にセンスを感じる。
 模型の切り取り方も良かった。(間下)

1X11A080 神保 洋平  A++
























 都市の宿景のようなインテリアと住宅内の家具のようなエクステリアを合わせ持つ装置は、注ぎ込まれる視線と排出される視線のレギュレーションの場のような、ストックヤードのような混在するものとして表現されている。整然としたものと雑然としたものがせめぎ合うエレベーションのイメージとで、エンドオープンな接点を持つ平面のイメージのさまざまなギャップが楽しめる仕かけとなっている。(博多)

1X11A138 福田 雄太  A++
















都市に生えるキノコ
ロータリーにキノコ型の大屋根をかける計画。
一枚の板が屋根でもあり床でもある状況を作り出し、空間を十二分に使い切っている所が素晴らしい。駅前のオブジェクトとしても、力のあるオブジェになりうる。足元に通過導線を取る等、ディテールにも配慮されており、この場所を読み解きができている案といえよう。(間下)

 1X11A051 工藤 永人  A++



















高田馬場駅前には待ち合わせの場所として開かれたスペースがない、という観察に基づいて提案された人工的な空間である。人々が丸くなって集まることから発想を得た円弧をモチーフとする仕切りは、待ち合わせのために時間を過ごす複数のグループ同士をも穏やかに繋いでいる。(安東)

 1X11A153 丸山 拓人  A++
















駅前ロータリーの機能によって生まれた形に沿うように、劇場の観客席が挿入された。平面的に広がる高田馬場駅前ロータリーに、人々の活動を許容する高低差が生まれ、空間を立体的な広がりに転じようとする意識が感じられ、交換が持てる。
ただし、高田馬場の駅前を劇場と見立てなくとも、既に劇場化しているのではないかとも感じてしまう。(TA堀)

1X11A015 市川 拓史  A++

















都市に集う:個が強調されつつもお互いに支え合うという、作者が持つ街のイメージを象徴するモニュメント。粘度によりやわらかな曲線で丁寧に作られた3つのオブジェの表面は、黒と青の銀紙により独自なタッチのテクスチャーを刻んでいる。この抽象的な形状が都市の中で独特の空間を構成する。(安東)

1X11A004 足立 圭衣子  A++






















 馬場タワー、約
16m。このタワーは機能をもたぬ、場を象徴する都市装置である。タワーであることより、馬場駅前の猥雑さを吸引して、ボロボロになって聳え建つ。おそらく、駆体にGaudiのトレンカディス手法によるタイルが一面に張られ、一部にトタン板がビス止めされる。その身振りによって、この場所を、この場所に集う人々の内面の表象として愛され続けるだろう。(入江)

第五課題「都市の装置」


出題者 入江 正之

都市の装置

今日、都市が成熟した時を迎えていると言える。情報化時代がそれに重なり合って、人々が繰り広げる生活の様相も複雑で、多様で、活気に満ちているように思われる。ヨーロッパでは広場が都市の中心的役割を果たし、それを囲い込む回廊、アーケード、ポルチコ等の歴史は建築のひとつの形式であった。たとえばイタリアの最初の首都であったトリノには、サヴォイア王家の統治の長い痕跡としての都市回廊が旧市街を縦横に走っていて、訪れたものの心に忘れがたい空間体験を残す。(参考スライド参照)そこでは人々の多様で、活気に満ちたコミュニティーが、重層して生まれているに違いない。
このような都市装置は歴史性のうえに成立していることを踏まえたうえで、東京に、場所を高田馬場駅前、ビッグボックス前の広場に選定し、都市の活性化に、人々の在り様に寄与する装置を構想する。



提出物;スケール120程度の模型―台座は275×550の範囲内とする。(スケール1200程度の全体説明図を規定用紙275×275に表現する)。両方に、学籍番号と名前を明記すること。






出題日:65
提出日;612日(水曜日)午後1時厳守。作品鑑賞。
講評日:619日(水曜日)


1X11A124 橋爪 慧太  A++













ナトリウムランプの街灯と、その街灯からそれた人影がかろうじて画面に浮かび上がっている。
壁沿いに見える薄明かりによって開放された感じというより、闇のトレンチの中を通行しているような、閉塞感が表現されている。闇によって作り出されたかたまりが、作品をより彫塑的に見せると同時に見る者に無限の奥行きを感じさせる。(博多)

 1X11A130 濱島 啓彰  A++














 沈む街:エアーブラシとぼかしの技法を使ってコントラストのある美しいモノトーンの作品に仕上がっている。ビルの街の中を飛ぶ鳥が霧の深さを物語っているようだ。また、霧の中にぽっかりと浮かんだ島も闇にたたずんでいる。いずれのシーンも「霧」が死角をつくり、その中に世界が沈んでいくような様を独特な表現力で描いた。(安東)

1X11A075 渋谷 彩音  A++












 人間がもつ機能としての「視覚」の限界から生じる「死角」ではなく、偶発的に生じた輪郭の消失を(太陽が高く昇るにつれて強さを増す光に効果)、日常のサイクルの中で生まれる一瞬から選びとったところに、まず作品としての強度があるように思われる。さらに、4つのシーンから構成され、登場人物の小さな挙動から、強い光によって消失してしまったはずの空間に焦点があてられ、この作品の鑑賞者は、「死角」の奥行きを感じることができる。(
TA堀)

 1X11A067 佐藤 千夏  A++






















月明かりへの逆光的なまなざしと唯一方向性を規定している電線のようなラインと、それをいつだつする形  横切るレース状のシルエットが印象的である。
日常的な視点であるにもかかわらず、軒先のエッジを、真下から見上げたような特異点をとらえたような死角とコントラストによるトリックが含まれている。(博多)

1X11A014 一岡 洋佑  A++










 遠近法の支配を受けない正方形のを重ねることにより、画面を開放している。
相似形を異なる目線から切り取って見せるという単純化された操作で、見えない部分に対する連続した意識が感じ取れる。(博多)

1X11A053 蔵田 夏美 A++

















歌舞伎の主役やお
はやし(・・・)たちが作り出す物語りや、さまざまなしな(・・)や仕草に見る者は心を奪われる。舞台の表に視覚的には見られるけれども、規範的には不可視である黒子の存在は、死角に存在性を賦与するものではないかという作者の声が聞こえてくる。概念をこえた内面からの発想を今後期待したい。(入江)

1X11A011 石川 麻莉 A++























 カーブミラーを丁寧に描いている。ミラーに映る街並み、道路などにも眼が追いかけているところが良い。ミラーがそのままとらえた周囲が刻明なのに対し、捉えられていない場所があることを図示によって説明している。カーブミラーに対する信頼という意識に死角があることを伝えて面白い作品となっている。(入江)

1X11A095 田川 萌子  A++






















町の床屋さんを丁寧に描いた作品。
ヘアサロン程鏡を十二分に使っている空間はないだろう。店中のことや客との会話、全て鏡越しと言っても過言ではない。
この作品の題材になっているような小さな個人経営の店の場合、その鏡には店の枠をとびこえて、個人の性格や生活感まで写してしまう。無防備な店員の後ろ姿に愛着を感じさせる。(間下
1X11A172 若山 麻衣  A++























「二十年のしかく」
アルバムを思わせる形状で仕上げられた四角のフレームに、ポートレートのようなドローイングが収まっている。そこには、7枚のトレーシングペーパーを使い、子供から現在の姿まで変化する様子が線描で丁寧に描かれている。自分自身の姿こそがリアルに直視できないということを「死角」のテーマに捉えた独特の視点がある。(安東)

1X11A167 山路 桜子  A++



挟まれた死角−ガラスの厚み

透明なガラスには何一つ死角など存在しないように思えるが、ガラスの厚みには、人は無意識なのではないかという発見を表現した作品。触れた手の離れ具合見事に厚みを描ききっている。着眼点と表現の切り口が良かった。(間下)

第四課題「死角」


出題者 博多 努

死角



日常の大部分を覆うもの
身近さ、凡庸さによって生じるもの
ミエガカリ・ミエガクレを規定するもの
逃げていくもの、埋没するもの
必ずしも暗さを伴わない昏がり
入口・出口・避難所
想定外に発見される微細な偏差がストックされる場所
意識の交換と反射が可能な余地を与えるもの

直接見えないことによって引き出されるものを自ら発見し
275×275用紙によって準備可能なフレームの中に表現して下さい。

提出物 ドローイング(275mm×275mm 枚数自由)
出題日: 2012年5月30日
提出日: 2012年6月6日
講評日: 2012年6月13日

2012年6月9日土曜日

1X11A079 新藤 翼  A++



 












 油紙の型紙を用いて紙風船のような立体を成形した。全体として容器を表現しながらも裏側にも大きなポケットが作られており、空間的な迷路のような複雑な構成である。一見するとシンプルな外見からは想像できない、奥深さが強い印象を残す。
(安東)
1X11A094 高橋 まり  A++



 



















ポケットをめぐる5つのものがたり
 Tシャツのようなシンプルな広い生地に、様々な形・大きさ・色のポケットが5つ縫いつけられている。それぞれのポケットの中にはポケットにまつわるオリジナルのストーリーがはいっている。構成は単純だが、衣服の抽象的な表現と丁寧な作りの物語の組み合わせがユニークで、ポケットの表現として面白い。(安東)
1X11A001 艾 慕  A++
















 白い台紙上に黒い布が布置される。黒い布は二枚で、磁石によって一枚になっているが、はがせばそこにポケットができることになる。が、白い台紙に投企された、黒布の面が白い背景のポケットであると考える方が面白いのではないか。その意図の中にさらにポケットが重合されることになる。熟考を期待したい。(入江)
1X11A004 足立 圭衣子  A++




 











 ピンク色の不定形の粘土の中にポツポツと緑の跡が残っている。なんとなく獣の足跡を彷彿とさせる。土に押し込まれた窪みは、小さな虫にとっては一種のポケット的空間になりえるだろう。
妙に愛着を感じさせるオブジェである。
(間下)
1X11A025 内田 久美子  A++



 


















 表面がカラフルな鱗で覆われた螺旋状の物体が、白い平面からしっぽの様にのびている。白い平面の裏には、思い出を集めた独特な夢のような世界があり、鱗のパターンが接続している。この隠された世界がポケットの内部を表現しているのか、鱗が裏返されたポケットを表すのか、観るものに考えさせる興味深い作品といえる。
(安東)